武士語のメールが解読できなかった時に覚えておきたいよく使う日常武士語

武士語、使ってますか?

――なんてよくあるブログ書き出しで初めてみましたが、まぁ普通に生活してたら使ってる人なんていませんよね。

いたら結構イタイヤツかと思います。

しかし。

僕の職場の先輩にいるのです。本当に。

その先輩とは20ぐらい年齢も離れているのですが、割と頻繁にメールしてきて、かつ中身が武士語。

武士語率が低めの時は理解できるのですが、僕も時代小説なんかは大好物ですから、ちょっと乗っかってあげちゃうと次に来るメールがフル武士語だったりしてもう流石に解読できません(因みにその先輩、ガラケーです)。

少ないとは思いますが、僕のように武士語メールで頭を悩ませている方の為に、今回は最低限覚えておきたい武士語をご紹介したいと思います。

なにとぞ!

※尚、武士語という言葉の定義なんてわかりませんので、ここでは「古い時代に使われていたであろう言葉全般」を武士語として紹介しちゃいますのでそこらへんはどうかお許し下さい。「それは武士語にあらず!」なんていうガチ勢さんどうか寛容に見て下さい。

武士語の主語

吾輩・我輩(わがはい)

夏目漱石かよ、とツッコミ入れたくなりますが、我輩という主語。

デーモン小暮閣下も使っていらっしゃるので、果たして武士語なのかどうかはわかりませんが「え」と引っ掛かるのは間違いないでしょう。

近い形で、我(われ)とか、余(よ)とか朕(ちん)とかもありますが、流石に僕も使われたことはありません。

朕なんて浅田次郎の『蒼穹の昴』でしか見た事ないかも。

拙者(せっしゃ)

これは僕の先輩使用率高めの言い方。

この辺りは本格的に武士語と言っていいかと思います。

拙者の「拙」の字はつたない、という意味ですから、私のような拙い者、というかなり謙遜した言い方です。

つまり、これを使ってきた場合、相手はかなり謙虚に出ていると考えて良いかと思います。

因みにお坊さんがこの言葉を使う場合は、拙者ではなく「拙僧(せっそう)」となります。

つよい。

某(それがし)

こちらも先輩使用率高めの言い方。

拙者、と同じようにかなり謙遜した言い方です。

ややこしいのが、某という字は「なにがし」や「ぼう」とも読むので文脈をしっかり見ないと読み間違う可能性があることです。

まぁ、読み間違えたところで支障無いケースも多そうですが。

武士語ガチ勢が使う言い方

やつがれ

「僕」と書いてヤツガレとも読むのですが、こんなの使って来るような方は相当こじらせているかと思います。あるいは無類の時代小説好き。スルーしましょう。京極夏彦好きなら乗ってあげてもいいかも知れません。

麻呂(まろ)

公家が使う麻呂。麻呂は~なんて言われたら、すぐさまタイムマシーンで送り返してあげましょう。ちょっと時代を間違えている可能性高いです。どう考えても日常会話では使いようがないです。

小生(しょうせい)

案外年配の方は使っている気がする(手紙とかで)小生。

僕の先輩も数回使ってきたことがあります。

作家かよ、とでもツッコんであげましょう。

文章の最後につく武士語

~ござる

○○でござる、なんて武士語としては初級なのでしょうが、とりあえず抑えておきたい言い方。

ただこの「ござる」、ありがとうございます、という風に今でも普通に使われている言い方の元になった言葉。

いる、いないを表して「ここにござります」とか、「ここにはござらぬ」などとも使えますし、行く、行かないという意味でも使われます。

~で候(そうろう)

出ました候。

これ、知らないと本当に何のことかわかりませんよね。

冗談ではなく最初僕は「この人のっけからゲスい自虐ぶっこんで来るなぁ」と思いました。早漏と勘違いしたわけです。

この候は、古い時代の手紙なんかには高確率で文章の終わりについてくる言葉。

候う、という言葉で身分の高い人にお仕えする、伺候する、という意味になり、それが次第に尊敬を表す言葉として文末につけられるようになったのです。

僕の先輩も多用しますが、流石に「ちょっと馬鹿にしてんのかな?」 と思っちゃいます。

ただ一応意味としては、かなり丁寧な言い方なのです。

こちらも使いたい場合、ございます、に置き換えてみると使いやすいかと思います。

「今日はいい天気で候(ございます)」

「なかなか大変な仕事に候(ございます)」

みたいに。

~な所存(しょぞん)

これもよく先輩に使われるんです。

ニュアンスはなんとなくわかりますが。

意味としては、「~と考えています」とか「~と思っている所です」という意味。

こちらも使いたい場合には、意味をそのまんま当てはめてみて、

「このクソ会社を辞めてやる所存(と考えています)」

とか、

「出来る限りは努力してみる所存(と思っている所です)」

のように使えば多分通じるかと。あ、武士語好きの方のみにですが。

文中に使われる武士語

大義(たいぎ)・難儀(なんぎ)

今でも全く使われないわけではありませんが、メールで使うとグッと武士っぽくなるのが大義・難儀あたり。

ただ、響きこそ似ていますが意味を間違えないようにしましょう。

「大義であったのぉ」

と言われれば、「ご苦労様です」ほどの意味。

「難儀じゃったのぉ」

と言われれば、「面倒だし大変だった」ほどの意味です。

左様(さよう)

これは時代劇を見てれば結構出てくる言い方です。

その通り、そうそう、みたいな意味ですのでこちらも使いやすいです。

武士語メールに返信するなら、頭に使うとちょっとかっこいいです。

「左様、拙者も同様に考えておりました」

そうそう、僕も同じように考えてました、という意味です。

因みに右様、とは使わないのですが、それはなぜか?

元々は左様は然様と書きました。

それが後に左という簡単な時に返還されて、左様となったようです。

また、昔は左の方が右よりも地位が高い傾向があったためとも言われています。

左様ですか。

恐悦至極(きょうえつしごく)

四字熟語になっちゃいますが、これも先輩がよく使う、たぶん好きな言葉。

「恐悦」で畏まり喜ぶ、という意味になり、「至極」はこの上なく、という意味ですので合わせて「この上もなく畏まり喜んでいる」という意味になります。

例えば、

「お給料を上げて頂いたとのこと、恐悦至極に御座ります」

などと、「なんかすみませんでもめっちゃ嬉しいっす」みたいな時に使うと良いかと思います。

重畳(ちょうじょう)

それは重畳!

などとメールで来るのですが、流石に初見ではわかりません。

これは「めでたい」という意味になります。

字を見ると、畳を重ねてますよね。

昔は畳というのは高級品で、それが重なっている(いっぱいある)のは嬉しい事、めでたいことだったから生まれた言葉のようです。

前項で紹介した恐悦至極の至極を使い、

「重畳至極!」

なんて送り返すのもかっこいいかも知れません。

是非もなし

コーエーテクモゲームスファンなら絶対に聞いたことがある、特に織田信長がいいがちな言い方が「是非もなし」です。

是(良い)も非(悪い)もないだろ、仕方ないだろ、という意味になります。

自力ではどうにもならない事に直面した場合、そもそも自分に選ぶ権利が無い場合などには、無念そうな顔で

「是非もなし……」

とでも呟けばちょっと場が引き締まるかも知れません。

解せぬ(げせぬ)

理解できぬ、という意味の解せぬ。

解す(げす)の否定形ですが、なぜか肯定する場合にはあまり使われないイメージ。

解せぬ!

面目ない(めんぼくない)・かたじけない

どちらも「申し訳ない」「ごめんなさい」という意味の面目ないとかたじけない。

ただ、微妙にニュアンスが違う気がします。

「面目ない」の方が面目丸つぶれとも言う「面目」が入っていますので、「情けない」し「ごめんなさい」感を強く感じます。

一方の「かたじけない」は相手への感謝を込めつつごめんなさい、というニュアンスなので素直さプラス謝罪というなかなか複雑な感情のこもった言い方です。

例えば――

部下の前でひたすらにダサイ失敗をし、皆に迷惑かけまくった場合は面目丸つぶれですし

「面目ない」

を使う。

大きな失敗をしそうになったけれども、部下たちが助けてくれてなんとかなったような場合は、部下への感謝も込めつつの

「かたじけない」

を使う。

まぁ、正直そこまで厳密に使い分ける必要はなさそうですが。

むしろ素直に「ごめんなさい」って言った方が伝わるってなもんです。

まとめ

小生、愚筆ながらもかれこれ長らくここまで書き進めて候。

難儀な作業ながらも書き終えた此の記事が何某かの役に立てば幸いに候。

間違いだらけであったのであれば面目なし。

されど、凡愚たる小生にとっては大義なれど、ああ畜生何書いているか最早全くわからんので候。

左様、是非もなき事にて、この辺りで退陣させていただく所存。

お読み頂き恐悦至極に候。

――無理でした。

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